カラフルで、エネルギッシュで、どこか混沌としている——。ここは、シンガポールのリトルインディア。街を歩けば、まるでインドへ旅に出たような錯覚を覚えるほど、香辛料の香り、鮮やかな建物、そして人々の活気があふれています。チャイナタウンとはまた違った“熱”を感じられるこの場所は、多民族国家シンガポールの魅力を象徴するエリアのひとつです。文化と暮らしが溶け合うリトルインディアで、心が踊るような街歩きを楽しんでみませんか。
チャイナタウンが「秩序ある活気」なら、リトルインディアは「混沌の生命力」。夜の街に足を踏み入れた瞬間、空気の温度がひとつ上がる。スパイスの香りと人々のざわめきが混ざり合い、どこを切り取っても生命が脈打っているような感覚に包まれます。ここはシンガポールの一角にありながら、インド亜大陸の熱気がそのまま息づく場所。喧騒すらも、この街の魅力の一部です。
歩いたのは夜。しかし、遅い時間にもかかわらずこの賑わい。通りには絶え間なく人が行き交い、話し声や笑い声があちこちから響いてくる。チャイナタウンがどこか整然とした印象だったのに対して、ここはまさに「リトルインディア」。カオスと呼ぶべき熱量が渦巻き、しかしそれが妙に心地よくて、立ち止まってしまう。
そして、目を引くのがこの鮮やかな建物たち。プラナカン建築の繊細さとはまた異なる、どこか大胆で自由な色使いは、インドの街角を彷彿とさせる。建物の周りには人々が集まり、座って語らい、夜を楽しんでいる。まるでシンガポールという舞台の中で、ひとつだけ別の国が息づいているようでした。
リトルインディアを歩いていると、ただ「インドっぽい街」という印象では片付けられない深さがある。それは宗教という人々の心のよりどころであり、建築という文化のかたちであり、そして食という暮らしそのもの。この街では、それらが境目なく混ざり合い、夜の熱気とともに息づいているのです。
ヒンドゥー教といえば、まずはこの形式の寺院。マレーシアやシンガポールの旅を通して何度も目にしてきたけれど、ここはやはり“本場”という言葉がふさわしい。祈りを捧げる人々の姿が絶えず、香の香りが濃く漂う。装飾の細やかさ、神々の表情、そして信仰の熱。ここでは建築そのものが祈りであり、信仰が街の空気をつくっています。
そして、ここでもやはり出会うプラナカン建築。リトルインディアといえども、シンガポールは多民族国家。その多様性の象徴のように、どこへ行ってもプラナカンの姿があります。リトルインディア独自の建築もまた鮮やかで、通りを歩くだけで色彩のパレードの中にいるような気分になります。
夜遅くでも賑わいを見せるホーカーセンターは、この街の胃袋だ。メニューはどれもインドらしさ満点で、1つのお皿に主菜も副菜もぎゅっと詰め込まれたスタイル。シンガポールならではの衛生環境の良さもあり、安心して食事が楽しめるのも嬉しい。香辛料の香りが漂う中、地元の人々と肩を並べて食べるひと皿は、旅人にとっても忘れられない体験になります。
そして意外な発見が、ウォールアート。リトルインディアでウォールアートを見かけることは珍しく、マレーシアなどでは見られなかった光景です。クジャクを描いた鮮やかな壁画は、この街の生命力そのもの。シンガポールでは野生のクジャクが身近な存在ということもあり、彼らにとっては馴染み深いモチーフなのかもしれません。
空から見つめる、昼間のシンガポール
都市国家 シンガポールの夜景巡り
ジュロン地区— 緑と日常に触れるシンガポール西部の街歩き
Shenton Way & Orchard Road — ビルと光が描く都会の物語
奇妙なシンガポールの異世界– ハウ・パー・ヴィラ(Haw Par Villa)-
西部散歩シンガポールのもう一つの顔へ
チャイナタウン活気・文化・祈りが交差する熱気の街へ