ペナンの街には、さまざまな祈りの風景がありました。金色に輝く仏像、色鮮やかなヒンドゥー寺院、静けさに包まれたモスクや教会――宗教の違いを超えて、どれも人々の暮らしに寄り添い、心のよりどころとなっているように感じます。
このページでは、そんなペナンで出会った宗教建築を、写真とともにご紹介します。
信仰と建築が語りかけてくる空間
まだ朝の光がやさしく差し込む時間、海辺に静かに佇むモスクを訪れた。祈りの時間ではなかったけれど、小さな子どもたちが一人で、あるいは家族とともに礼拝する姿があった。自分よりも幼いその姿に、信仰の深さと、この場所の大切さを教えられた気がした。モスクに響くのは、波の音と、静かな心の声だった。
ペナンで最も大きな州立モスク。広々とした敷地に、白い天井と緑の絨毯が織りなすシンメトリーな空間が広がる。礼拝時間外には内部の見学も可能で、精緻な装飾と静けさが、イスラム建築の美しさをじんわりと伝えてくれる。祈りの場であると同時に、異なる文化をそっと迎え入れてくれる優しい場所だった。
カラフルで繊細な彫刻、強く香るお香、そしてどこか神秘的な祈りの空気――ヒンドゥー教寺院に足を踏み入れた瞬間、ペナンの多民族文化がまたひとつ、鮮やかに姿を現しました。
色とりどりの神々が並ぶ塔門(ゴープラム)は、その存在感だけで街並みにアクセントを与えています。その装飾の細やかさ、そして信仰が息づく空間の熱気は、写真越しでも感じられるほどでした。
ペナン最古の道教寺院として知られる観音寺。けれどその中心には、仏教の観音菩薩が静かに祀られ、お香の煙の中に、道教と仏教がゆるやかに交差する姿がありました。ひとつの寺に、ふたつの信仰。多民族国家マレーシアならではの、祈りのかたちがそこにありました。
仏教の祈り、多様なかたちで
ペナン最大の仏教寺院。山の斜面に広がる広大な敷地に、仏塔や本堂が点在します。カラフルな装飾、精巧な彫刻、そして丘の上から見下ろす景色。観光名所としても有名ですが、そこにあるのはやはり「祈り」の空気でした。どこまでも続く回廊を歩きながら、静かな時間が流れていくのを感じました。
そして本堂の中に足を踏み入れると、黄金に輝く仏像が穏やかな表情で迎えてくれました。荘厳で、でもどこかあたたかいその存在は、旅の途中で立ち止まる心の拠り所のようでした。
金の塔がそびえる、ミャンマー様式の仏教寺院。境内には仏像や装飾がずらりと並び、どこを見ても黄金色が目を引きます。ペナンで唯一のビルマ寺院として、仏教徒だけでなく観光客からも愛される場所でした。
巨大な寝釈迦仏が安らかに横たわる、タイ様式の寺院。穏やかな表情に見つめられていると、自分の心も自然と静かになっていく。天井まで装飾が施された内部は、どこを切り取ってもまるで美術館のようでした。
ペナンに残る英国統治時代の記憶――セント・ジョージ教会は、東南アジア最古の英国国教会のひとつ。真っ白な壁とギリシャ風の円柱が印象的で、歴史ある街並みの中に、静かにその存在を示していました。今回は外から見守るだけの訪問になりましたが、その静けさもまた、この教会の魅力のひとつかもしれません。
ペナンの街並みと海、そして夜の風景たち
ペナンのウォールアートと観光名所めぐり