香港の北、中国大陸側にまるで別世界のような都市がある。
深圳。
香港から日帰りで行ける都市。
今回はふらりと訪れた短い旅だったけれど、その体験はとても濃かった。
入境所から観光スポットの1つである京基100まではタクシーで数分。
約3kmの距離で400円ほど。その安さにまず驚くけれど、もっと驚いたのは――
音がしないこと。
走っているのに静か。周りにも多くのタクシーが走っているのに、静か。
都市のざわめきをすり抜けて、音のない未来がすぐそこにある。
深圳のタクシーはEV(電気自動車)。
その静けさが、この街の“進んだ時間軸”をそっと教えてくれた。
最後に、ひとつだけ悔いがあるとすれば――
夜の深圳を見られなかったこと。
国際平和金融中心からの夜景が、きっと素晴らしいとわかっていたのに、
今回はそれを胸にしまったまま帰ることになった。
けれど、だからこそ思う。
「この街には、まだ続きを見に来る理由がある。」
ハイテク都市とは聞いていた。だからこそ無機質で、機械的で、なんだか冷たいような都市なのかなと思っていた。
でも、深圳は違った。
音のないタクシーが未来を連れてきて、
絵筆の残る壁が、人の温度を残していた。
また来よう。今度は、夜の街を歩くために。